# 行列計算の極意!中級者向けMMULT、MINVERSE関数活用術
## すぐに試せる具体的な関数活用法
まずは、中級者向けの実践的な例をお示しします。以下のような場面を想像してください:複数の営業マンの売上データを部門別に集計し、その逆行列※1を使用して原価を逆算する必要があるとします。
**MMULT関数を使った基本的な計算例:**
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=MMULT(A2:C4,E2:G4)
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このように記述することで、複数の行列データを一度に掛け算できます。手作業で行っていた計算が数式一つで完結するため、時間短縮につながります。
**MINVERSE関数を使った逆行列の計算:**
“`
=MINVERSE(A2:D5)
“`
これは行列の逆行列を求める関数で、複雑な連立方程式※2を解く際に威力を発揮します。
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## ポイント1:MMULT関数の本質を理解する
MMULT関数(行列乗算関数)は、複数の数値グループを効率的に処理する強力な武器です。多くの中級者は、この関数の真価を理解していません。
従来の方法では、部門別売上と単価を掛け合わせる際、セルごとに手動で計算式を作成していました。しかし、MMULT関数を活用すれば、数十行・数十列のデータも一瞬で処理できます。
例えば、4つの部門の3ヶ月分売上データを、3つの商品カテゴリーの重み付けと組み合わせる場合:
– 従来法:12行×3列=36個の計算セルが必要
– MMULT関数:たった1つの式でOK
配列数式※3として認識させるため、入力後に「Ctrl+Shift+Enter」を押すことが重要です。これを忘れると関数が正常に動作しないため、多くの初心者がここでつまずきます。しかし中級者なら、このひと手間が習慣になれば、業務効率は飛躍的に向上します。
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## ポイント2:MINVERSE関数で複雑な問題を一発解決
MINVERSE関数は「逆行列」を計算する関数ですが、これが何に使えるのか、実務的に理解している人は意外と少ないのです。
簡潔に説明すると、ある結果から原因を逆算したい場合に活躍します。例えば:
– 最終利益から各部門の目標利益を逆算
– 完成品の仕様から必要な原材料配合を算出
– 売上目標から必要な単価設定を計算
製造業の原価管理では特に重宝されます。最終製品の原価が決まっているとき、各工程の配分原価を自動計算できるのです。
ただし注意点があります。MINVERSE関数は「正方行列」(行数と列数が同じ)にしか使用できません。また、行列式※4がゼロに近い場合は精度が低下します。実務では事前に行列の性質を確認する習慣が必須となります。
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## ポイント3:Excel関数を組み合わせた高度な活用
本当の効率化は、MMULT、MINVERSE単体ではなく、他のExcel関数との組み合わせにあります。
例えば、SUM関数やIF関数と組み合わせれば、条件付きで複数の行列計算を実行できます:
“`
=IF(条件, MMULT(A:B), MINVERSE(C:D))
“`
また、IFERROR関数を組み合わせることで、計算エラー時の対応も自動化できます。これにより、レポート作成の完全自動化が可能になるのです。
営業分析では、月次データを行列形式で保存しておき、期末にMMULT関数で年間集計を一発実行。同時にMINVERSE関数で目標達成に必要なパラメータを逆算するといった使い方も実現します。
中級者こそが、こうした複合的な活用に気づき、他の同僚との生産性に大きな差をつけられるステージにいるのです。Excelの関数を単なる計算ツールではなく、ビジネス問題を解く武器として活用する。これが真のExcel活用術といえます。
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※1 逆行列:ある行列に掛けるとゼロになる特殊な行列
※2 連立方程式:複数の未知数を持つ方程式の組み合わせ
※3 配列数式:複数のセルに対して一度に計算を実行する特殊な式
※4 行列式:行列の性質を表す単一の数値





